斑入りのメカニズム
●斑入りとは何か?
植物における斑入りとは、葉や組織の細胞内に含まれている葉緑素の全てあるいは一部が失われる現象です。
葉緑素が全て失われた場合、組織に含まれていた葉緑素以外の色素の色が現れることになり、フラボンやカロチン、
アントシアニンなどの含有量によって、斑入り部分は白色や黄色、ピンク色など様々な色合いを示します。
また、完全に葉緑素を失わない場合には、本来は緑色であったものが淡緑色や黄緑色となります。
斑入りはその美しさから、古くから錦葉とも称され珍重されてきました。しかし、葉緑素は植物の光合成に必須の
材料ですから、斑入り植物は元の植物と比べると光合成能力が低下するため、当然のことながらあまり丈夫ではありません。
そのため、斑入り植物の栽培では注意が必要となります。
●斑入りの分類
植物に斑が入るのは様々な原因によるもので、完全に解明されていない場合も多くあります。
単に斑入りといっても色々な分類法がありますが、ここでは単純に斑入りの原因から以下の5種類に分類してみます。
イ.通常の遺伝による斑入り
ロ.細胞質遺伝による斑入り
ハ.周縁キメラによる斑入り
ニ.ウィルスによる斑入り
ホ.その他
この他に、外見上は斑入りに似ているが全く違うものとして、養分の不足や高温などによって代謝異常が起こり、
葉緑素がうまく作られず葉が黄色になるクロロシスという現象もあります。斑入りのなかには、この5種類が
さらに組み合わされた場合もあるので、実際の斑入りがどの原因によるのか判別するのは、あまり簡単ではありません。
とりあえず、ここでは上の分類によって斑入りがそれぞれどう違うのか、順番に見てゆくこととします。
イ.通常の遺伝による斑入り
これは、いわゆるメンデルの法則に従って斑入りが起こるもので、通常は劣勢として斑入りが遺伝します。
非常に安定した斑入りであり、アサガオやオオバコ、キンレンカ(ナスタチューム)の斑入りなどが含まれます。
栄養条件などによって斑が消えてしまっても、条件が良くなれば再び斑が現れますし、
自家受粉などにより種子から高い確率で斑入り植物を育てることも出来ます。
ロ.細胞質遺伝による斑入り
遺伝子は細胞核以外にも、細胞質にある葉緑体などにも含まれています。この葉緑体が葉緑素の合成能力を失えば当然斑入りとなります。
このような場合、花粉からではなく胚珠から遺伝情報が伝えられることが多いため、通常は母系でのみ遺伝するのが特徴です。
そのため、母系の種子親に斑入りを使用すれば、斑のない緑葉の花粉親を使っても得られた種子を蒔けば斑入り株を自家受粉させた場合と
同様にある程度(経験的には3割程度)の斑入り株が得られます。
双子葉植物における散り斑や掃込み斑、単子葉植物の縞などは、このタイプの斑入りであることが多いようです。
なかには遺伝性が強く安定な斑入りもあるのですが、多くの場合は非常に不安定な斑入りであり、白葉や緑葉に分離してしまうことがあります。
しかし、逆にこのタイプの斑入りから次に説明する周縁キメラによる斑入りに変化して、安定することもあります。
ハ.周縁キメラによる斑入り
キメラとは、異なった遺伝子を持つ細胞が混在する生物のことです。普通、植物は3層構造からなっていますが、
いずれかの層で葉緑素が失われることにより起こる斑入りは、周縁キメラによる斑入りと呼ばれています。
各層で斑入りと正常の2種類の組み合わせがありますから、2×2×2=8通りに分類することができます。
下に模式図を示しますが、外側の1〜2層が斑入りになると葉の周辺部に白色または黄色の斑が現れた覆輪となり、
内側の1〜2層が斑入りになると葉の中央部に斑が入った中斑(中透け)となります。また、中央の層だけが正常または斑入りに
なることもありますが、この場合は二重覆輪になります。いずれにしても安定した斑入りであるだけでなく外観も美しいため、
園芸的には極めて重要な斑入りですが、種子を蒔いても斑入りは遺伝しません。これは、種子が外から2層目の部分を元に作られるためで、
一般に覆輪の種子を蒔けばは斑が消えた正常な植物となりますし、中斑の種子からは全体が斑入りで光合成できずに枯れてしまう、
うぶ斑の植物しか得られないのが普通です。
ニ.ウイルスによる斑入り
遺伝によるもの以外の斑入りとして、植物がウイルスに感染することにより葉緑素が失われて、斑入りとなる場合があります。
本来は病気なのですが、斑が美しく他の株にほとんど感染しなければ、園芸的に他の斑入りと同等に扱われることもあります。
例としては、ツバキの葉に雲状に現れるボタ斑が代表的なものですが、オモトの虎斑や図斑もウィルスによる斑入りの可能性があります。
斑入りと緑との境界がはっきりせずぼんやりとしていることが多く、種子で斑入りが遺伝しないのもウィルスによる斑入りの特徴です。
ホ.その他
シクラメンやカンアオイなどの葉に普通見られる斑紋と呼ばれる模様は、厳密には単なる模様であって斑入りではありませんが、
斑入りとして扱われることがあります。また、原因が明確でない斑入りもあるので、ここではそれらを一括してその他として扱うこととします。
以上、斑入りのメカニズムについて簡単にまとめてみました。この文章は以前にインターネット上にあった
「珍草奇草園芸倶楽部」に書き込んだものに、加筆訂正したものです。
しかし、この分野は私自身の専門ではないので、正確ではない点も多いかと思います。
感想や意見、質問などあれば、遠慮なくメールをお送りください。